なんとなくピアノの音が聴きたくなりショパンでも聴こうかなと思ったけど、目に付いたベートーベンの月光を聴くことにした。
第1楽章がとても悲しい感じの旋律で、第2楽章では一転して軽やかな曲になる。そして第3楽章では激しく、そして情熱的な曲である。
聴きながら一つの話を思い出した。
終戦間近の昭和20年。特攻出撃を控えた二人の兵士が基地からピアノを求めて佐賀県鳥栖市の鳥栖小学校へたどり着いた。
余談になるが、私はこの鳥栖小学校へ行った事がある。たまたま母の叔父と叔母にあたる人が鳥栖小学校の近くに住んでおり、しばらく滞在させてもらったのだが、もう25年も前のことで小学3年か4年のだったし、当時はこのようなことがあったとは知らなかった。
二人の兵士は東京音楽学校(現在の東京藝術大学音楽学部)の出身であり、出撃の前にしばらく弾いていなかったピアノを弾きたかったのであった。
しばらくの間、二人はベートーベンの月光などを弾いていたという。特に第3楽章などは相当なテクニックがないと弾けない。持てる全ての力を振り絞って、この世に別れを告げる曲を奏でるのは、どのような気持ちなのだろうか... まさにこの曲の曲調そのままだったのではないだろうか。
いつしかピアノを聴きに集まった子供達との別れ際に、二人の兵士は「この戦争はいつかは終わります。しかし今自分達が死ななければ、この国を君たちに残すことはできません」と言ったという。
海行かば 水漬く屍
山行かば 草生す屍
大君の
辺にこそ死なめ
かへりみはせじ
私達の豊かな日本はこのような水漬く屍、草生す屍の上に成り立っていることを忘れてはいけない。
[参考文献]ミラー大尉の残したものhttp://www2s.biglobe.ne.jp/~nippon/jogbd_h11_1/jog080.html