この映画は舞台となるプラハがあるチェコ共和国(当時はチェコスロバキア)の歴史を多少思い出さなければならない。
話は1988年から始まる。社会主義国家だったチェコスロバキアに住む主人公ロウカ。チェロの名手でオーケストラの首席奏者を務めたこともあるが、その自由奔放な発言のため政府から良い仕事を与えられず、葬儀場の演奏係をやっている。でも本人はそんなに気にする様子もなく、50を過ぎているにもかかわらず、女遊びに明け暮れる。
借金が嵩んで来たロウカはもっと稼ぐために車が欲しくなるが、その資金を得るためにロシア人の女と偽装結婚して資金を得る。女はやがて西ドイツへ亡命してしまうが、その時置いて行ってしまうのがもう一人の主人公コーリャ。
結婚もせず、子供にも全く興味のないロウカだが、コーリャと過ごしながら本人も徐々に成長し、コーリャにとって親同然の存在となってゆく。そして1989年の東欧革命が二人の運命を引き裂くことになる。
なんといってもこの映画はコーリャの子役をつとめる男の子の演技だろう。「ほんとに演技なのだろうか?」と思わせるくらいの自然な動き、一人でお風呂に入っているときに、死んだことを知らされていないおばあちゃんに会いたくて、シャワーのノブを電話の受話器に見立てて、涙を流しながら話をするシーン。ここは涙なしに見ることができない。
またチェコにはすばらしい音楽がある。国民的な作曲家スメタナとドヴォルザーク(ドボジャーク)の音楽をバックに物語りは展開してゆく。(交響詩 我が祖国、わが母の教えたまいし歌など)
そしてところどころで垣間見れる美しいプラハの町並みとボヘミアの自然。もともとチェコへ行きたくて、事前学習のためになんとなく観た映画だったけど、感動のあまり3回ほどビデオをレンタルしたくらいです。

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